縁組も家屋も伝染するオサキ持ち
どんな伝承か
南埼玉郡の一帯に伝わる話として、北武蔵の山村ではオサキ狐の棲む家を「オサキ持ち」と呼んで嫌うという。この狐は昔、九尾の狐の尾の一本が飛んできて生まれたもので、ふしぎな術を使い、ふだんは姿を見せない。主人の心にかなうと金銀や米穀などを勝手によそから運び込むので、オサキ持ちの家はたちまち富む。そのため他家から縁組を避けられ、オサキ持ち同士で縁を結ぶ。普通の人がこの家と縁組したり土地や家屋を買い取ったりすると、その家もオサキ持ちになるという。最初に尾に飛び込まれた本家では、近隣の蚕まで消えて狐の仕業と知れたと伝わる。
原典より
この狐はたいへん自己主義の狐で、主人の心が気に入ると、金銀、米穀その他何でも勝手によそから運んで来る。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。