白馬の武将が駆ける一本杉の鎧塚
どんな伝承か
蕨城跡から真北へ四百メートルほどの所に、一本杉と呼ばれる古い塚がある。落雷などで枯れた樹齢四百年ほどの杉の大木が立ち、鎧塚とも冑塚ともいう。城主渋川公とともに討ち死にした部将の鎧や冑を埋め、杉の苗を植えて弔った所と伝わる。付近に住んでいた巫女は、この塚から蕨八幡社へ白馬で駆けていく武将の姿を夢に見たという。塚や杉に手をかけたり参道をふさいだりすると大けがや変死に見舞われ、そうした出来事は戦後にも起きた。そのため日露戦争後の耕地整理でも誰も手を出せず残されたという。蕨元村を開いた金子氏にかかわる塚だとする説もある。
原典より
これを別名鎧塚とも冑塚ともいい、蕨城主渋川公と共に戦死した部将の鎧、冑を埋め、杉苗を植えて葬ったものと伝えている。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。