夜中に戸を叩いた筆子地蔵
どんな伝承か
白岡町篠津、星川に架かる高台橋の近くには、かつて阿弥陀堂があり、境内に六地蔵が立っていた。堂は寺子屋として使われていたので、筆子たちは地蔵のまわりでよく遊んだ。あるとき師匠が、いたずらな子を懲らしめようと本尊の前に座らせたまま、すっかり忘れて寝てしまった。夜中に戸をコトコトと叩く音がするので覗いてみると、暗がりに子どもが立っている。近寄ってよく見ると、それは石の地蔵だったという。それから寺子たちは地蔵の台石に筆子の名を刻み、香や花を絶やさなかった。阿弥陀堂は明治の初めに廃され、跡地は今は住宅になっている。
原典より
近づいてよくみると、それはなんと石の地蔵様だったという。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。