伊予・黒島の鼠の群を網で引き込む
どんな伝承か
瀬戸内海の西部、伊予の黒島の鼠の話は『古今著聞集』巻二十に記録されている。場所は矢野保という荘園の内で、人里から一里ほど離れた所だという。安貞のころ、桂はざまの大工という網人が網を曳こうと様子をうかがっていると、黒島のほとりの磯の水面がおびただしく光っていた。魚だとばかり思って引き上げたところ、それはすべて鼠だった。浜に上げられた鼠は散り散りに逃げ去り、それ以来島には鼠が満ちて畑の作物を食い尽くし、耕作ができなくなったという。柳田は、命がけで海を渡ろうとしていた鼠の群れを、取り違えから島へ連れ込んだのだと見ている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第1巻』は、柳田国男の著作を集めた著作集の一巻である。椰子の実の漂着から日本人の渡来と稲作を海の道に求める論考と、海神宮考・みろくの船・根の國の話・寶貝のこと・稻の産屋などの諸篇、大正期の南島旅行に基づく『海南小記』、昭和二十六年八月の自序をもつ『島の人生』を収める。いずれも海と島を舞台に、ニライカナイや宝貝、漂着や島の復興をめぐる民俗と歴史を論じている。