病床に群がった六、七十匹の鼠
どんな伝承か
今から二百四、五十年も昔、享保のころ、仙台御城下でのことである。伊東氏の家来に六兵衛という者がいたが、何かの妖災によって病を得、久しく床について危篤となった。伊東氏の義兄新妻胤信が、ある夜、亥の刻ごろに見舞に訪れると、六兵衛は毎夜安眠できず心身が疲れ果て、先も長くないようだと語った。励ましながら枕もとに座っていると、どこからともなく大小の鼠がちょろちょろと灯のあたりに現れ、その数は六、七十匹にもなった。寝床の上を行き来し、枕のあたりを這い回る。いくら追い払ってもすぐ集まって鳴き騒ぐ。病人は夢中で叱り、自分が出て行くと褥を抱えて部屋を出ようとした。その後まもなく六兵衛は死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。