神憑り執筆中の教祖に鼠が這う
どんな伝承か
大正七年八月二十七、八日頃、今井梅軒は教祖の三女久子に案内され、薄暗い廊下を通って出口直の部屋に入った。すり切れた畳の六畳間の窓際では、白髪の老婆が机に身をかがめたまま動かずにいた。久子が来客を告げても返事はなく、そのとき部屋の隅から鼠が走り出てその背中に這い上がったが、老婆は身じろぎひとつしなかった。よく見ると筆を手に何かを書いており、久子はいまお筆先が出ているところだと驚いて告げたという。
原典より
その時、鼠が突然部屋の隅から走り出て来て、木像のやうに動かないその人の背に慣れくしう這ひ上ったのを私は見ました。—— 日本神異見聞伝(笠井鎮夫・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本神異見聞伝(笠井鎮夫・1974年(昭和49年))
『日本神異見聞伝』は、笠井鎮夫が昭和四十九年に著した霊異の見聞記である。第一篇では、大正期に大本で鎮魂帰神を受けた著者が、霊媒による死者の招霊や狐霊・竜神の託宣、霊石の発掘などを研究会での語りの口調で伝える。第二篇では、慶応三年のええじゃないかのころ尾張・遠江・駿河・美濃・丹後などで起きたお札降りを、旧家の古文書や郷土史家の便り、著者の現地調査から記録している。