二 靈言現象の最初の體驗
どんな伝承か
浅野和三郎が自らの霊言体験を語る。大正五年の春、当時横須賀に勤めていた彼は、三峯山の女行者石井ふゆを通じて心霊の世界に目覚め、精神統一で霊的体験を得ようと同僚の海軍将校や文官を書斎に集めて鎮魂の実修を重ねた。仲間で最も霊媒的天分に富んでいたのは宮澤理学士(虎雄)で、実修第一夜から半恍惚の入神状態に入った。第二夜、宮澤の全身が棒を呑んだように強直し、鼻息が颶風のように荒れ、閉じていた唇が縦横に激しく運動し、下腹部からグウグウと音を発するものがこみ上げる、紛れもない霊言現象が突発した。新参の術者は狼狽して施す術を知らなかったと記す。
原典より
實修第二夜に大音聲でカラークルと鳴り出した青年理學士。—— 心靈講座(浅野和三郎・心霊研究・講座・1928年(昭和3年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心靈講座(浅野和三郎・心霊研究・講座・1928年(昭和3年))
『心靈講座』は、浅野和三郎が昭和三年に著した心霊研究の講義書である。催眠現象から人間に霊魂が宿ることを説き起こし、欧米の心霊研究の歩みをたどったうえで、物質化・心霊写真・直接談話・卓子浮揚・物品引寄・霊視・霊言・自動書記の各現象を、クルックスやモーゼスらの実験と記録に拠って検討する。第一講から第十講までと結論から成り、結論では心霊研究が人生や信仰に及ぼす影響を論じ、新霊魂説の七大綱領の訳を載せる。