枝垂桜を柳と呼んだ寺の子
どんな伝承か
十月二十七日、柳田は南多摩郡の乞田を歩いた。分教場の女教員に吉祥院のことを尋ねていると、押し出されるようにして色白で面長の少女が前へ出る。寺の子だという。あの杉山の中、背の高い柳の木が見えるだろう、あれがうちの寺だと少女は言った。桜ではないかと問い返しても、はっきり柳だと答える。不審に思って後から行ってみると、本堂を隠すほど茂った大木の枝垂桜であった。土地の人がシダレと呼ぶのを、この子だけがシダレなら柳だと覚え込んだのだろうか。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第3巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第3巻』を全158話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。