柏崎の漆器を輪島と偽って売る
どんな伝承か
明治四十年五月、柏崎を訪れた折に聞いた話である。柏崎は古い町で、三国街道との追分にあたり、小売店の並ぶ中に古道具屋が目立って多い。現在の繁栄は石油によるものだが、以前は越後縮の産地として知られ、行商人を多く送り出す土地でもあった。柏崎の漆器は木地も漆も、大方は外から取り寄せて造られているのに、世間へは「輪島」と言って売られているという。しかしその技術は精巧で、少しも輪島の名声を傷つけるものではないのだと、土地の人は語っていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第3巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第3巻』は、柳田国男の紀行・日記・随筆を集めた著作集の一巻である。相模・武蔵の村々を歩いた「水曜手帖」、昭和二十三年八月の自序を持つ「北国紀行」、明治四十三年の「五十年前の伊豆日記」、国際聯盟の委任統治委員会に勤めた大正十一年の「瑞西日記」と「ジュネーブの思ひ出 その他」を収める。後半の「菅江真澄」は昭和十七年二月の序を付け、真澄の著述と旅の跡を年を追ってたどり、写真解説を添える。