帰国者が明かした春日部八幡の菩提樹
どんな伝承か
粕壁町の総鎮守である春日部八幡神社には、関東では珍しい菩提樹が境内に育っていると知られるようになったいきさつが伝わる。何年か前、この町の出身で海外に出ていた人が帰国し、少年のころに遊んだ懐かしい菩提樹にもう一度会いたいと、この宮を訪ねてきた。それがきっかけとなって、関東ではめったに見られない菩提樹がこの境内にあることが、はじめて知られたという。著者は社司の家で炬燵にあたりながらこの話を聞き、表へ出ると、冴えた鎌のような月が神木の向こうに冷たく懸かっていた。
原典より
先年、海外から歸朝した此町出身の一人が、彼の少年時代に遊んだ懐しい菩提樹を尋ねて此宮へ來たことから、關東に珍しい菩提樹が此宮の境内にある事を始めて知つたとゆう話などを聴いてゐるうちに、…—— 行楽と史蹟の武蔵野(寺島裕・1937年(昭和12年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
行楽と史蹟の武蔵野(寺島裕・1937年(昭和12年))
『行楽と史蹟の武蔵野』は、寺島裕が昭和十二年に著し、新生堂から発行した武蔵野の史跡探訪記である。狭山丘や山口貯水池の周辺から、行田・粕壁・生田・淀橋・中野・柴又・多摩御陵などの社寺、城址、古戦場、塚を歩いて訪ね、交通の便とともに由緒や伝説を記す。小橋一太と新井堯爾の序文、著者の自序を巻頭に置き、前著「史蹟の武蔵野を探ねて」に続く行楽案内として土地ごとの短い節を連ねる。