供養を怠り倉が飛び去った山崎長者
どんな伝承か
『聖誉鈔』に収められた、『信貴山縁起』飛倉の巻の原型とも見られる話。昔、山崎に住む男が信貴山に詣でて富を願うと、福を授けるが毎朝鉢を持って訪れる僧に必ず供養せよとの夢告があった。男は富み栄えて山崎長者と呼ばれ、欠かさず僧に施した。しかし年月がたつと家の者が面倒がり、鉢に黒米を入れ魚の肉まで投げ込んで返した。僧が帰り道の川で鉢を洗って魚肉を捨てると、長者の倉は信貴山へ飛び去り、家は元の貧しさに戻った。この僧は命蓮上人が使った空鉢護法の化身で、本体は蛇だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
異界巡礼(小松和彦)
『異界巡礼』は、小松和彦が著した民俗学の論集である。狐が人に化ける方法と如意宝珠、蓮如絵伝の異人、鬼退治譚と怨霊、家の盛衰をめぐる民話、夢信仰、巫女と陰陽道、洞窟や龍宮の他界観、人を神に祀る信仰、神隠しなどを、昔話・説話・絵巻・お伽草子と高知県物部村などでの調査をもとに論じる。論考と随想を部に分けて並べ、「民俗のランドスケープ」の部には妖怪、凧上げ、祓い、霜月祭り、呪い人形をめぐる小文を収める。