牝鹿が身を投げた鏡の井戸
どんな伝承か
武庫郡良元村には鹿野の里・夢野の里と呼ぶ集落がある。奈良朝のころ、春日神社の牡鹿が姿を消し、後を慕った牝鹿がこの村までたどり着いて井戸をのぞいた。水面に映る自分の影を、探し求めた牡鹿と思い込み、そのまま飛び込んで死んだという。以来この井戸を鏡の井戸と呼び、鹿が身を投げた十一月十五日をオシタキ祭と称して、かつては一切魚を口にしなかった。井戸そのものは今は残っていない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説名彙(柳田国男(指導)・日本放送協会(編)/関敬吾・石原美子(編纂)・1949年(昭和24年))
『日本伝説名彙』は、柳田國男の指導のもとに日本放送協会が昭和二十四年に編んだ伝説の名彙である。全国の伝説を、その拠り所となる木・石・岩・橋・清水・淵・塚・坂・屋敷・地蔵などの地物の名ごとに集め、伝わる県郡村名を付して、郡誌・市町村誌や伝説集、民間伝承誌などの出典を括弧で示す。冒頭に柳田の「傳説のこと」を置き、木・石岩・水・塚・坂峠・祠堂の部に分けて、巻末に資料の解説と種類別索引を付す。