練兵場の塹壕で輪になって踊る河童
どんな伝承か
磯部豊子がまだ小学生だった大正十四、五年ごろの出来事だという。当時の静岡市城東町は歩兵第三十四聯隊の練兵場で、その東側に一間幅ほどの川が流れ、水辺には菅や葦が生い茂っていた。ある朝、登校しようと川沿いの道を歩いていると、塹壕の上で異様なものが戯れているのを見た。蛙が前脚を上げて立ったような格好の、一メートル丈ほどのものが三匹、輪になって踊りながら近づいてくる。驚いて立ちどまると、相手も人影に気づいたか塹壕の中へ消えてしまった。土色の肌で、胸から腹にかけてはわずかに白味を帯びていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。