練兵場で肥溜めに入り娘に手を引かれた
どんな伝承か
昔、矢切の方から帰ってくると、その上は一面の練兵場で、家ひとつ見えなかった。ある人は畑の中で「おお深い」と言いながら歩き、あとで気づくと肥溜めの中に入っていたという。三度同じところを回って、ようやく狐に化かされたと気づき、急いで座り込んで煙草に火をつけると、ぱっと目の前が消えて元の場所に戻っていた。続けて別の語り手は、酒好きの男が葬式の知らせに出た晩、練兵場へ上がる坂で「しっかり上がりなさい」と美しい娘に手を引かれたと語る。そばの人が変だと言っても本人は喜んでおり、これも狐の仕業だろうということだった。
原典より
国分新田(いまの北国分)なんかで、祝いごとに招ばれて、帰りにみやげなんかもらって、いっぱいきげんで練兵場のあたりをふらふら歩いてくると、よく狐に化かされたという話は聞きましたね。—— 市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年))
『市川の伝承民話 第1集』は、市川民話の会が昭和五十五年に編んだ民話の資料集である。市川市教育委員会の事業として昭和五十四年度に千葉県市川市の国分・北国分・行徳・南行徳で行った採訪調査のうち、テープ起こしを終えた語りを、方言も残して話者の息継ぎのままに記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部に分けて地区別に並べ、話末に話者・地区・記録者の名を添える。