魚のはらわたを狙われた練兵場の夜
どんな伝承か
語り手の家のおじは東京で魚屋をしていた。魚のはらわたは畑の肥料として貴重で、おじは大八車に桶を積み、江戸川橋を渡って国分まで運んでくれた。真間の坂道を避けて見通しのよい練兵場の原を回るのが常だったが、日暮れ後にそこへさしかかると、魚の匂いに誘われた狐が化かしに来る。もう着くはずだと思いながら引いても同じ道をぐるぐる回るばかりで、朝方に空の車でやっと家にたどり着いたという。翌日畑を探すと、通る必要のない遠くの場所で桶がひっくり返り、はらわたが一面に散らかっていたと、おじは自慢話のように語ったそうだ。
原典より
国分新田(いまの北国分)なんかで、祝いごとに招ばれて、帰りにみやげなんかもらって、いっぱいきげんで練兵場のあたりをふらふら歩いてくると、よく狐に化かされたという話は聞きましたね。—— 市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年))
『市川の伝承民話 第1集』は、市川民話の会が昭和五十五年に編んだ民話の資料集である。市川市教育委員会の事業として昭和五十四年度に千葉県市川市の国分・北国分・行徳・南行徳で行った採訪調査のうち、テープ起こしを終えた語りを、方言も残して話者の息継ぎのままに記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部に分けて地区別に並べ、話末に話者・地区・記録者の名を添える。