不幸のたびに屋根で啼く黒猫
どんな伝承か
昭和九年の夏、横井春野が試合観戦の帰り、市川にいた弟の夫人から「病気危篤、すぐ来い」との電報を受け取った。夜を厭わず駆けつけ門口で屋根を見上げると、一匹の黒猫が糸のような声で啼いていた。横井家では父がかつて酒興で黒猫を刺し殺して以来、身内に不幸があるたびに黒猫が現れるという因縁があった。石を投げても猫は屋根から離れず、暁方に啼き声が止むと同時に弟は息を引き取ったという。
原典より
* 左甚五郎作の大黒天 (288)* 十二号室の怪異 (290)* 一つの不思議 (293)* 喧嘩する石の狐 (294)* 美人に化けた貉 (295)* 墓を棄てる (296)* 狐の本音…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。