ナベ猫屋敷の名を残した黒猫の浄瑠璃
どんな伝承か
表永井の裏側の山手に大ひらという所があり、そこに一軒の家があった。この家に迷いこんだ野良猫は全身まっ黒だったのでナベと名づけられ、婆になついてそばを離れなかった。あるとき近所に浄瑠璃語りが来て泊まり、この家でも婆さん一人を留守番に家族全員が岩の沢へ聞きに行った。寂しさに猫へ話しかけると、猫は今夜の演し物である大職冠藤原鎌足を語ってやろうと言い、人には語るなと口止めして見事に語った。翌朝、婆がつい口走ると、ナベは唸り声をあげて飛びかかり、喉を喰い破って姿を消し、ナベ猫屋敷の名だけが残った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。