洪水を生き延びた男助山と女助山
どんな伝承か
昔、天変地異が一度に起こった。山は崩れ谷は埋まり、平地が山になり、雨は滝のように降って、鳴り光り落ちるさまが幾日も夜のようであったという。ついに大洪水となってあらゆるものが流され、この辺り一帯は大海のようになった。生き残ったのは二人だけで、水の上に出ていた小さな島に男が一人、別の小島に女が一人流れ着き、どちらも自分ひとりが助かったと思っていた。三年三月を経て濁水が引くと、助かった小島は山の頂であった。食料を探しに出た二人は偶然に出会い、初めて二人の世界だと知る。この二人がこの辺りの人々の祖先で、二つの山を男助山、女助山と名づけたと伝える。
原典より
山は崩れ谷は埋り、平地が山になり雨は滝のやうに降り、鳴る光る落ちる、何日もく夜の如くであった。—— 日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。