赤ん坊を避けて弱った黒猫クー
どんな伝承か
昭和三三年、葛飾区金町でのこと。長女の出産をひかえた母が、猫は赤ん坊の顔に乗って殺してしまうと言い暮らしていた。飼い猫はそれを聞き取ったのか餌を口にしなくなり、掌にためた牛乳をようやく舐めるほど弱った。赤ん坊が生まれると、猫はそれまで寝起きしていた部屋へ二度と入らず、別室に赤ん坊がいれば遠回りして避けた。子守唄が聞こえると戸の外でじっと耳を澄ませている。哀れになって抱きあげ赤ん坊のそばに座らせたところ、猫は震えあがり、腰を抜かして歩けなくなった。産後二十一日で母が帰ると猫は人にもらわれ、まもなく死んだ。クーという名の黒猫だった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。