猪を退ける狼の声を神と崇めた村
どんな伝承か
恵那地方の福岡町木積沢では、猪が田に入り込んで稲を食い荒らすのに悩まされていた。柵や石垣で囲い、火を焚き、水の力でコトンコトンと鳴る仕掛けを作り、家族が夕飯をとる間も外で見張って追い立てたが、それでも入り込み、一時間も荒らされると三畝ほどの田がすっかり食われてしまう。ところが山に狼が来てクオーッと鳴くと、谷じゅうが地響きのように鳴り渡り、猪は怖じ気づいて三日ほど出てこなくなった。そのため土地の人は狼をありがたい神様のように思っていたという。話者自身は声を聞いたことはなく、聞き伝えの話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。