産後の納戸に響いた門口の狼の声
どんな伝承か
母から七、八歳の頃に聞いた話だという。母がちょうど子を産んで納戸で寝ていると、狼が門のところまで来て、うわぁーとひと声鳴いた。その声で障子の紙がびりびりびりと響き、三度ほど鳴いて去っていったという。そのときは家の者みな顔色が変わり、恐ろしくて誰ひとり声を出せなかった。翌晩にも遠くでまた狼の鳴く声がした。それはたいそう恐ろしかったらしいと、母は語っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。