十里先の海まで禊に出た天野宮
どんな伝承か
水による清めは、海水を浴びるのが原則だったらしいと著者はいう。紀州伊都郡の天野宮では、十里ほども西の海岸まで出向いて禊をした。大きな神職団であったから、原則に従う格式を意識して保とうとしたのだろうと著者は推している。山村の者がはるばる海まで出て浴する例は中部地方にもあるが、おおむね西日本のほうが東日本より海に浴する風が盛んで、瀬戸内から北九州にかけては旧暦六月末ごろに人も牛も潮を浴びる習俗がよく行われているという。
原典より
紀州伊都郡の天野宮など、一○里ほど西の海岸まで出て禊をした。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。