二又川のえんこうに軍帽を流した舅
どんな伝承か
南国市で末松川と塘川が合わさる少し下、川が二又に分かれる所があり、付近の在所は二又と呼ばれる。この川のえんこうは昔からいるといわれながら、姿を見た者も尻を抜かれた者もいない。ただ、この川に落ちた人は決まって帽子をなくし、いくら探しても出てこなかった。五十年ほど前、書き手の西隣の久枝さんが年下の青年と再婚した。夫は朝倉の連隊に入り、秋の演習で隣の部落の民家に泊まることになった。舅の芳太郎さんは軍規を知りつつこっそり招いてもてなしたが、帰りに二又川へ落ちて軍帽を流し、近所総出で夜明けまで探しても見つからなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。