比江山に飛ぶ掃部助の怨念火
どんな伝承か
土佐国長岡郡国府村の比江山は、長宗我部元親の叔父にあたる比江山掃部助の城跡とされる。掃部助は元親の怒りを買って討手を差し向けられ、妻子一族とともにあっけなく討たれた。それから今に至るまで、雨のそぼ降る夜には比江山に火が上がる。赤い色で傘ほどの大きさがあり、一里あまりも飛び回る。草履を脱いで裏に唾を吐きかけて招くと、車輪のように飛んで来るという。昔これで招いた男は恐ろしくなって逃げ帰ったが、火は家の周りを飛び続け、やがて怪しい火が出て家は焼けてしまった。それで、見るだけならよいが招いてはならないと固く戒められている。
原典より
それから後、今に至る迄雨のそほ降る夜には比江山に火があがる。—— 民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。