満濃ヶ池へのイドの送り状を託された男
どんな伝承か
明治のころ、岡豊がまだ岡豊村だった時分、蒲原部落の役次という若者が瓦焼きに雇われていた。十二月二十八日の夕方、仕事帰りに川の堤を歩いていると、草むらから小坊主が出てきて、讃岐の満濃ヶ池の堤にいる者へこの包みと書き付けを届けてほしい、賃ははずむと頼んだ。旅支度で八幡諸坂峠まで来ると隣の作さんに会い、字の読めない役次に代わって作さんが書き付けを読むと、人のイドを干したもの九十九に生きたイドを一つ添えて百を送るという送り状だった。えんこうの本家は満濃ヶ池の大王で、各地の淵の分家は暮れにイド百を納める掟があるという。役次は命拾いをした。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。