諸田の原から断崖へ運ばれた娘
どんな伝承か
鹿児島県大島郡の徳之島での話である。明治二十五年ごろ、回答者の祖母が十四、五歳のとき、諸田の原で草を刈っていて道に迷った。やがて体がふわりと宙に浮くような心地がして、耳には波の音が届いた。日が暮れても戻らないので家の者や村人が大騒ぎになり、総出で捜しに出る。祖母は人の入ったことのない断崖の上に、ぽつんと座っていた。人々はようやく助け出したが、着物には砂などがびっしり付いていた。これはボージガミ、すなわち河童に祟られて魚取りに連れて行かれたのだと口々に言い合い、祖母は父からさんざん叱られたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。