水車小屋に現れる毛むくじゃらの影
どんな伝承か
吉原の集落に住む徳二郎という人が、四十歳ごろに体験した話である。家の前の田に沿って小川が流れ、そこに精米所の水車小屋があった。ある夏、縁側でうとうとしかけると、水車のそばに背丈三尺ほどで目が光り、全身毛に覆われた子どものようなものが立ってこちらを見ている。目を開けると消え、眠りかけるとまた現れた。翌日水車の下の溝をさらうと、川砂利の中から修理の際に置き忘れたらしい鑿が一丁出てきた。カワノモノ(ガワッパ)は金物を嫌うので知らせに出たのだと考え、神主にお祓いを頼むと、その後は現れなくなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。