川の者に襲われ天神に救われた徳二郎
どんな伝承か
昭和の初めごろ、南小国町吉原部落の徳二郎さんが五十歳ほどのときの話。冬の夜、黒川温泉からの帰りに山裾の曲がり鼻で、黒いものに体当たりされ二度も小川に落とされた。吉原の手前で以前見た怪物に出会い、下駄で殴って頭の毛をむしり取った。家でその毛を燃やすと異様な臭いが満ち、山から来た白い火の玉が、家人には見えぬまま彼の腕に貼りついた。信心する菅原天神の絵像を弟の家へ取りに走らせると火の玉は離れたが、本人は一週間正気を失った。春祭りで神主に、川の者に命を取られかけたが天神の信心で救われたと告げられ、村の東に祠を建てて天神を祀ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。