毎年姿を消す醤油屋の若い者
どんな伝承か
明治になってからの話である。水沢大町に後藤屋という醤油屋があり、寺小路から大町に出た突当りにあった。この店の若い者の一人は、毎年ある時季になると突然姿を隠し、十日ほど経つと青い顔をしてひょっこり帰ってきた。戸締りを厳重にしていても、いつの間にか家の中に入っている。主人が問い詰めると、天狗がやってきて日高神社の境内で待っていろと命じ、そこからさらに高い山へ連れて行かれた、その後は東京でも大阪でも好きな所へ連れて行かれて見物させてもらったと打ち明けた。家人は気味悪がって、この若い者を追い出したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。