雪の井戸端に残った狸の足跡
どんな伝承か
狸というものは本当に化けるのだと話者は言う。話者の妻が井戸端で洗い物をし、野菜くずや切れ端をそのまま出しておいた。その晩は雪が降って朝には一面真っ白になったが、井戸端が散らかっている。妻に聞くと、出しっぱなしの物はきちんと片づけておいたと言う。よく見ると、草履で井戸端へ行った足跡はあるのに、帰った足跡が無い。さらに調べると、井戸端から帰っていく狸の足跡が残っていた。来るときは娘の姿でやって来て、腹いっぱい食べてから正体を現し、狸に戻って帰ったのだろうという。
原典より
手平の短歌の先生とこへ行ったとき遅なってしもうてのう、先生に送ってもろうたんやが、あっこらさぶしいとこでのう、ドブのはたにお地蔵さんがあったんえ、そのお地蔵さんの一寸向うにうどんて書いた赤いちょうちんがつっちゃあって、そ…—— 現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。