ソバの花を大津波と見て震えた使用人
どんな伝承か
清水村、越村と呼んでいたころの話。ある資産家が、若い使用人の松を清水村の知り合いのもとへ返事をもらいに走らせた。昼過ぎに出たまま戻らず、日が傾いたので旦那は年配の使用人二人を探しに出した。先方では用は立ち話で済みとうに帰ったと言う。道の両側を気をつけて戻ると、暮地の手前のソバ畑の隅で松がしゃがみ込んで震えている。一段下の畑いっぱいに咲くソバの花を指さし、大津波が来る、動けば流されると言うので、平手で三つ四つ張ると正気づいた。旦那は、昔からあの辺には人を化かす古狸がいると言ったという。
原典より
手平の短歌の先生とこへ行ったとき遅なってしもうてのう、先生に送ってもろうたんやが、あっこらさぶしいとこでのう、ドブのはたにお地蔵さんがあったんえ、そのお地蔵さんの一寸向うにうどんて書いた赤いちょうちんがつっちゃあって、そ…—— 現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。