チワヤ村への山道を暗くした狸
どんな伝承か
昔、太井の人が、話者の家より少し奥から山を越えてチワヤ村へ行く道を通った。今はほとんど通る人のない道である。すると急に道が暗くなり、どうにも先へ進めなくなった。これは大変だとここで一服しようと、木の株に腰かけて煙草を吸い、煙をぷうっと吐いた。すると手を広げたほどもある大きなきんたまの狸が、きゃんきゃん鳴いて逃げていった。狸がだましていたのである。あたりはぱっと晴れ、その人は先へ行けたという。話者が七十七歳のとき、六十五、六年前のこととして語った話である。
原典より
手平の短歌の先生とこへ行ったとき遅なってしもうてのう、先生に送ってもろうたんやが、あっこらさぶしいとこでのう、ドブのはたにお地蔵さんがあったんえ、そのお地蔵さんの一寸向うにうどんて書いた赤いちょうちんがつっちゃあって、そ…—— 現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。