狸をいぶす者に火事を告げた坊さん
どんな伝承か
本山寺の旧参道で、遍照院から二、三〇〇メートルほどのところの西坂に大きな岩があり、その岩の下に狸の穴があった。昔、村の人がそこで狸を捕ろうと火を焚いていぶしていると、遍照院の坊さんがやって来て「何をしているのか」と尋ねる。狸をいぶして取っているのだと答えると、坊さんは「狸を取りどころではない、いま本山の集落が火事だ、早く帰らねば」と言った。みなが慌てて帰るあいだに狸は穴から出て逃げてしまい、火事などどこにも起きていなかった。あの坊さんは狸だったのだろうと語られている。大きな岩の下には火を焚いた跡が残っていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。