ムクノキの下を転がるテンコツチ
どんな伝承か
柵原町飯岡の飯岡神社の西方には大きな池があり、その排水溝と道をはさんだ向かいに、樹齢二百五十年と伝わるムクノキの大木が近年まで立っていた。いまは枯れて切り株だけが残る。地元の秋山勇の話では、そのムクノキのあたりに、真夜中になるとテンコツチが転がり出たという。テンコツチとは藁を打つのに使う槌のことである。秋山自身は見ていないが、何人もの人から目にしたという話を聞かされたそうだ。木は墓地と道路の境に生えており、その木陰は夜ともなればひときわ濃い闇をつくっていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪伝説奇聞(東雅夫・2005年(平成17年))
『妖怪伝説奇聞』は、東雅夫が二〇〇五年に学習研究社から刊行した妖怪伝承地の探訪記である。稲生物怪録の木槌、クダン、牛鬼、塵輪、ナメラスジ、八幡の藪知らず、鬼の骨、蛇骨、鍋島の怪猫、児啼爺などを追い、中国・四国・九州ほか各地の寺社や旧家を訪ねて遺物と伝承を確かめる。月刊誌「ムー」の連載「日本伝説紀行」の十二章を三つのカラーグラビアで区切り、巻末に草双紙『鍋島猫騒動』の復刻を添える。