盂蘭盆の夜に曲尺町を転がる青白い火の玉
どんな伝承か
錦見の曲尺町、江見氏の邸から東方の森重伝三郎邸の半ばあたりまでは、昔は明覚院で、殊に東側は墓地であったという。増補者の叔母が若い頃、盂蘭盆十五日の夜、踊りを見に行って夜更けに帰り、塩屋町の四つ角へ差し掛かろうとしたところ、曲尺町が殊の外明るく見えた。ふと見ると直径五寸ほどの青白い火の玉が道を転がって来て、ついに森重邸へ入っていった。叔母はこれを見るなり走って家へ帰ったという。これは墓地に葬られた大食の亡霊が、餓鬼になっても飽き足らず、不平のあまり火の玉と化したものだろうと記されている。
原典より
錦見曲尺町江見氏の邸より東方森重伝三郎居邸の半あたり迄かけて、昔は明覚院にて、殊に東の側は墓地なりし由なり。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。