城山の崖で脈を乞う大女と志賀薬師
どんな伝承か
志賀又右衛門は腕の劣る医者だった。今津へ往診に行った帰り、夜更けに城山の崖沿いの道を通っていると、慢心を戒めるためか、上の山から身の丈五、六丈もある女が現れて脈をみてほしいと言う。気丈な又右衛門がその手をしっかり握ると、毛深い手だった。病の見立てを問われて風邪と答えると、女は血の道だろうと言い、彼を桟道から突き落として消えた。増補によれば、落ちたはずの又右衛門は元の崖に立っており、日ごろ信じる薬師如来の加護と悟って、普済寺の東の小山に堂を建てた。これが志賀薬師として長く信仰されたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。