首を失った石仏と七尋女房
どんな伝承か
海士町御波の太井から中里へ抜ける旧道の、標高二百メートル近い場所に石仏と呼ばれる地蔵が祀られている。昔このあたりに夜ごと大女の化物が現れて通行人を悩ませ、丈が七尋もあるので人々は七尋女房と呼んで恐れた。旧布施村の庄屋前田某が夜分に中里の大庄屋村上助九郎宅を訪ねる途中、髪を振り乱した女が現れて馬の轡をつかんだので、腰の名刀千鳥丸で斬り捨てた。以後化物は出なくなり、正体は昼間人々の信仰を集める石仏だったという。石地蔵には左肩から右下へ鋭い刀傷があり、首から上は今も見つからない。首は保々見の天川あたりに落ちているとの告げもあったが、大勢で捜しても見つからなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。