手を引いた娘が木の枝に変わる
どんな伝承か
高知県高岡郡、檮原分の越知面に、貧しいが親孝行な若衆がいた。母が病で寝込んでおり、薬代にも困っていた。ある日、隣の村へ母の薬を買いに出かけ、その帰り道、山を越えねばならないうちに日が暮れ、雨も落ちてきた。真っ暗な道で少し休んでいると、下の方から美しい娘が上がってきて、越知面の兄さんかと声をかけた。芳生野(東津野分)から帰る途中で心細いから連れて行ってほしいという。若衆は手を引いて山道を下り、柔らかい手と器量のよさに、嫁にもらってもよいと悦に入っていた。ところが我が家の戸口で見ると娘はおらず、太い木の枝をぎっしり握っていた。母は、あの峠にいる古狸の仕業だと言ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。