甫木山発電所の導水管に唸る鋳掛屋
どんな伝承か
明治から大正にかけての話。新改村の甫木山に大きな県営の発電所ができたが、当時はまだ珍しかったので、落成式には近在から見物人が大勢押しかけた。まず目についたのは、高い山の上から下の発電所へ水を引いた太い鉄の導水管だった。たまたま居合わせた先着の物知りが得意顔であやしい説明をすると、鋳掛屋のおじさんが、ほうっ、あの管の中を水が通ってきて、この発電社で火になるのかと驚き、それにしても自分もずいぶんキセルを張ったものだが、この大きな管を張るのは少々面倒だ、これは難しいと言ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。