水槽から逃げた亀の子と豪雨
どんな伝承か
昭和三十三年九月二十六日の台風二十二号は関東地方に大被害をもたらし、伊豆地方が最もひどく、中野区でも妙正寺川や桃園川が氾濫した。著者の家の庭先には、子どもが亀の子を入れた水槽があった。前日の夕方、雨が多く降れば水が溢れて亀の子が逃げ、子どもが落胆すると思って水をかい出しておいた。それなのに翌朝には、深さ一尺五寸の水槽が溢れて、亀の子は逃げてしまった。それほどの豪雨だったという体験談である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
城西風土記と昔語り(熊沢宗一・1959年(昭和34年))
『城西風土記と昔語り』は、東京中野の江古田に住んだ熊沢宗一が昭和三十四年に著し、自ら発行した郷土誌である。中野長者と淀橋の伝説、御犬小屋や桃園の旧跡、新井薬師、江古田の獅子舞、内藤新宿や高田馬場の昔語りなど、中野と近在の伝説・旧跡・寺社を、古文書や碑文、琵琶歌も交えて記す。全二十章の後半には著者の百姓時代や終戦直後の食糧事情、台風の被害、日露戦争の軍隊日誌を収め、巻末に著者略歴を付す。