鬼婆が布をさらした山の白い筋
どんな伝承か
坂井郡高椋村のたかとりの少し手前に、布さらしと呼ばれる山がある。今は見晴らしのよい名所とされるが、昔は登る者がいなかった。この山には鬼婆が住み、頂から見下ろす深い谷の流れで毎日布をさらし、さらした布を頂から麓まで長く干していたのが土地の者にも見えたという。山には木が一本もなく、今も植えてもすぐ枯れる。鬼婆が布をさらした跡は、布幅ほどの筋となって赤土の山肌に白く幾すじも残り、遠くからも見えるので、布さらしの名がついたと伝わる。
原典より
この山に一人の鬼婆が住んでゐて、毎日々々布をさらしてゐた。—— 福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年))
『福井縣鄕土誌 民間傳承篇』は、福井市立実科高等女学校の郷土誌第二輯として教諭中塩清之助が編み、昭和十四年二月付の学校長金岡正孝の序を巻頭に置く。丹生郡の名、哭女、越前萬歳、仏の舞、幸若舞、猫塚、隠れ里、子育て幽霊、愛発の関、弁慶譚、八百比丘尼、水の神女譚を、古文献や他地方の類例と照らして論じる。生徒が集めた県下の昔話は類話をA・Bなどに分けて並べて解説を付し、校正者大村四朗の跋を添える。