継母の作った大蛇に呑まれた弟と漆ヶ淵
どんな伝承か
昔、丹生郡西安居村に兄弟がいた。母は弟には実の母だが兄には継母で、まじめに働く兄をいつも憎んでいた。兄弟が毎日山へ漆かきに通うのを見て、母はひそかに山道で蔓や枝を集め、大きな蛇をこしらえた。そして弟にだけ、兄を驚かせて仕事を遅らせるための作り物だから怖がるなとささやいた。翌朝、山道で赤い舌を出す大蛇に出会うと、兄は驚いて逃げ戻り、弟は平気で笑っていた。すると大蛇は口を開けて弟を呑み、山の下の淵に沈んだ。日野川と足羽川が合わさるその淵は、以後漆ヶ淵と呼ばれるという。
原典より
そのとき大蛇は大きな口を開けて弟をのんでしまった。—— 福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年))
『福井縣鄕土誌 民間傳承篇』は、福井市立実科高等女学校の郷土誌第二輯として教諭中塩清之助が編み、昭和十四年二月付の学校長金岡正孝の序を巻頭に置く。丹生郡の名、哭女、越前萬歳、仏の舞、幸若舞、猫塚、隠れ里、子育て幽霊、愛発の関、弁慶譚、八百比丘尼、水の神女譚を、古文献や他地方の類例と照らして論じる。生徒が集めた県下の昔話は類話をA・Bなどに分けて並べて解説を付し、校正者大村四朗の跋を添える。