福井城下を練り歩く首なし行列
どんな伝承か
百年ほど前まで、越前福井の人々は毎年四月二十四日の夜を恐れ、日が暮れると一歩も外へ出なかった。この夜、外で何ものかに行き逢った者は血を吐いて死ぬが、背を向けて見ず見られずにいれば命は助かるという。鳩の御門の枡形には月のない夜なのに月が映り、そこへ踏み込んだ者は出られずに石垣に頭を打ちつけて死んでいた。子の刻を過ぎると九十九橋の上に松明のような火が一つ、二つと現れて次第に増え、一刻ほどで橋の上も橋の東西も埋め尽くす。柴田勝家の軍勢が勢揃いするのだといわれ、火が一斉に消えると首のない白装束の武者や騎馬の行列が城下を練り歩く。見ても黙っていれば助かるが、話せばすぐに血を吐いて死ぬ。他国から来たらしい男は窓からこれを見てしまい、翌朝問い詰められて話したとたん、血を吐いて息絶えたという。
原典より
首のない白装束の軍勢が、夜どほし城下を、武者押しの道筋も定めずに練り歩く。—— 民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。