手拭いや座布団から火が出る寺
どんな伝承か
円了が伝え聞いた越前の寺の怪火。今から十五、六年ほど前、越前国の風巻にある寺で、部屋の内外に火が燃え上がる不思議が続いた。昼も夜も巡査が詰めて調べたが、原因はついにつかめなかった。実際に見聞きした人の話では、人のいない所でいきなり紙に火がついたり、柱に掛けた手拭いや座布団から火が出たりすることが数十日も続いたという。ただ、寺の下女に怪しいふしがあったともいい、円了は、火をつけて人が驚くのを面白がる病による人のしわざかもしれないと述べている。
原典より
先年、その実状を直接見聞した人から聞いたところによると、人の居ないところに突然紙に火がついて燃え上り、あるいは柱にかけておいた手ぬぐいに火を発し、…—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。