椀を貸した丸い芝山・腕貸山
どんな伝承か
柳田国男が大正七年に新聞で発表した隠れ里の研究に、福井県の例として紹介された伝説である。丸岡から中川村へ向かう道の右手に、腕貸山という丸い形の芝山があり、土地の人はこれを貸塚とも呼んでいる。『越前国名蹟考』が『影響録』から書き写した下久米田の黍塚がもしこの山のことであれば、ここでも慶長のころまでは、頼めばそれに応えて椀や家具を貸してくれたらしい。さらに七十年ほど後の延宝のころまでは、この岡から流れ出る川に、毎朝米のとぎ汁が流れていたとも言い伝えられている。
原典より
福井縣の丸岡から中川村へ行く道の右側に、腕貸山といふ丸い形の芝山があつて、土地の人は之を貸塚とも呼んでゐる。—— 福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年))
『福井縣鄕土誌 民間傳承篇』は、福井市立実科高等女学校の郷土誌第二輯として教諭中塩清之助が編み、昭和十四年二月付の学校長金岡正孝の序を巻頭に置く。丹生郡の名、哭女、越前萬歳、仏の舞、幸若舞、猫塚、隠れ里、子育て幽霊、愛発の関、弁慶譚、八百比丘尼、水の神女譚を、古文献や他地方の類例と照らして論じる。生徒が集めた県下の昔話は類話をA・Bなどに分けて並べて解説を付し、校正者大村四朗の跋を添える。