お盆に海釣りをすると……………
どんな伝承か
昭和57年の夏、15歳だった筆者は、瀬戸内海に浮かぶ愛媛県の津和地島へお盆の釣りに出かけた。島の家を一人で守る大おばあさんは、送り火の日は地獄の釜が開くから海へ出るなと戒め、盆の殺生も嫌った。筆者はそれを聞き流し、15日の夜、島裏の宮ノ鼻に続く砂浜でシロギスをねらった。午前0時を過ぎてライトを消し横になると眠り込み、引き潮のうねりに口を開けた地獄の釜へ人影が次々と吸い込まれる夢を見た。金縛りが解けた直後、生温かくぬめる何かに足首からふくらはぎをつかまれ、道具を置き去りにして集落まで逃げ帰ったという。
原典より
安堵したのも束の間、今度は何か生温かいぬらりとした感触が足首に伝わってきたかと思うと、ふくらはぎの間をギュッと掴まれた。—— 水辺の怪談 ベスト(つり人社) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談 ベスト(つり人社)
『水辺の怪談 ベスト』は、釣り人たちが海や川や湖で出会った怪異の体験談を集めた本である。お盆の夜釣りでの金縛り、伊豆大島の釣り宿の離れ、渓流の滝壺や湖のボート、アユ釣りやマス釣りの遠征先の宿などを舞台に、エサ屋の店主・会社員・釣りライター・バスプロら十七人が、自身や仲間の体験をつづる。「海の章」五編と「川・湖の章」十二編の二部に分け、各編の冒頭に筆者の短い紹介を置き、四人は仮名で書く。