盆の夜に娘の靴を履いた叔母
どんな伝承か
お盆の入りの七月十三日、午前一時を少し回ったころのことだという。石神井の坂田和江が九歳の娘の鼻血の手当てをしていると、勝手口の戸がしきりに鳴った。鍵をかけたはずなのに扉は少し開いており、しめ直そうとしてもうまく掛からない。背後に人の気配を感じて振り返ると、七年前に九州で亡くなった叔母が黒っぽい着物姿で立っていた。叔母はそこにあった娘の赤いチェックの運動靴を履き、応接間へ上がっていく。追おうとした坂田は後ろから強い力で引かれ、振り返っても誰もいない。翌朝、靴はソファの上に揃えてあり、爪先だけが濡れていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けは生きている —科学にとり残された霊の世界(平野威馬雄・1974年(昭和49年))
『お化けは生きている――科学にとり残された霊の世界』は、平野威馬雄が昭和四十九年に著した、怪異と心霊をめぐる読み物である。読者から寄せられたお化けの報告や沖縄の刑場・遺念火の話、霊視の体験、近世随筆に見える妖草妖木・狐・天狗・人魂などの物の怪、フォックス家事件やクルックスの実験など欧米の心霊研究を扱う。著者が始めた「お化けを守る会」の由来、西丸震也・星新一との座談会、透視や念力を試すテストを含む全七章に、あとがきを添える。