盆の夜に引き寄せられた宿
どんな伝承か
大学時代、友人四人でステーションワゴンにテントを積み、東京から北海道へ二十日のマス釣り旅に出た。猛暑で川も湖も水温が高いなか、大雪湖だけはアメマスがよく釣れた。疲れが出て、最終日は知床で温泉にでも入ろうとしたが、盆に当たって宿はどこも満室である。網走方面も断られ、観光地ではない遠いK町の宿に電話すると、すんなり空きが見つかった。宿名を復唱したとき雷が鳴り、友人のRだけが「来るとき通った、気味が悪かった」と言い出し、車を出してからも執拗に泊まるのをやめようと繰り返した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談 ベスト(つり人社)
『水辺の怪談 ベスト』は、釣り人たちが海や川で出会った怪異の体験談を集めた本である。お盆の夜釣りでの金縛り、伊豆大島の釣り宿の離れ、渓流の滝壺や湖のボート、バス釣りの遠征先の宿などを舞台に、釣具店主・会社員・釣りライター・バスプロら十七人が自身の体験を一人称でつづる。「海の章」五編と「川・湖の章」十二編の二部に分け、各編の冒頭に筆者の在住地と釣り歴を記した短い紹介を置き、四人は仮名で書く。