鉄橋の写真に写った六人の土工
どんな伝承か
ある年の春、旭川近くの中別川鉄橋の工事で、コンクリートを運ぶトロッコ一台が途中から行方不明になり、そこに付いていた六人の土工も姿を見せなくなった。監督たちはトロッコを枠に投げ捨てて逃走したのだと言いふらし、事件はうやむやに葬られた。十月に鉄橋が竣工し、開通式のために写真師が撮影したところ、乾板がぼんやりとしか写らない。赤い電灯に透かすと、鉄橋の前に土工姿の六人が薄く写っていた。取り調べで、六人は枠へ墜落して惨死し、監督がそれを承知で隠していたことが露見した。
原典より
奇怪にも、その乾板には、薄ぼんやりと撮った鉄橋の前に、これも薄ぼんやりと撮っているのは、たしかに土工姿をした六人の男であった。—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。