金属音とともに現れる白装束の女
どんな伝承か
十年以上前の夏、渓流を撮り歩くカメラマンが同行者と積丹半島のF川に入った。神恵内名物のうに丼を食べ、離村した集落跡の先の橋のたもとにテントを張る。夜半、橋の欄干を棒で叩くようなカーン、カーンという金属音で目が覚めた。霧が出て空気は粘り、朝には音が消えている。翌夜も同じ音が鳴り、うとうとすると暗い滝と白装束で髪の長い女が夢に現れ、二度目は女が大きくなって手招きをした。目覚めると全身が汗にまみれ、同行者も体調を崩し、二人は早朝に撤収した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談 ベスト(つり人社)
『水辺の怪談 ベスト』は、釣り人たちが海や川で出会った怪異の体験談を集めた本である。お盆の夜釣りでの金縛り、伊豆大島の釣り宿の離れ、渓流の滝壺や湖のボート、バス釣りの遠征先の宿などを舞台に、釣具店主・会社員・釣りライター・バスプロら十七人が自身の体験を一人称でつづる。「海の章」五編と「川・湖の章」十二編の二部に分け、各編の冒頭に筆者の在住地と釣り歴を記した短い紹介を置き、四人は仮名で書く。